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親しいからこそ言えない? 大事にするために知っておきたいこと

 

2020/01/16

いつもお読みいただき、ありがとうございます。
チューリップ企画スタッフのわかです。

印象的な2つの質問

東京にある日本科学未来館のチケットの裏に、哲学的な問いかけが書かれていると話題になっていました。

展示を通して科学技術に関する知識や情報を提供するだけでなく、来館者1人ひとりに科学技術や地球の未来を考えてもらい、さらには行動につながっていくような場を提供したい、という思いが込められているそうです。

問いかけは全部で8種類あり、どれも面白い質問でしたが、中でも私が気になったのは、次の二つの質問です。

「永遠に生きられたら、永遠に生きるだろうか?」

「どんなに親しい人にも知られたくないことがあるのは、なぜだろう?」

前回は「永遠に生きられたら、永遠に生きるだろうか?」の問いについて考えました。

求めているのは永遠の命? 哲学的な問いに隠された私たちの本当の願いとは

今回は、もう1つの問い「どんなに親しい人にも知られたくないことがあるのは、なぜだろう?」について見ていきたいと思います。

親しい人ってどんな人?

「親しい人」の究極をいえば、何でも言い合えて、お互いを理解しあっていて、誰よりも信頼できる人ということでしょう

「阿吽の呼吸」「ツーカーの仲」とも言いますが、多くを語らなくても、ちゃんと言いたいことが伝わる。そんな関係に多くの人が憧れを持っているのではないでしょうか。

人間関係は、どんな場面においても気を遣うものです。

私たちはみんな、変な奴だと思われたくない、立派な人だと見られたいと思って生きていますので、外ではきっちりとした自分を演じています。

これを仏教では「名誉欲」と言われます。

演じすぎて本来の自分とのギャップに疲れてしまう、という人も多くいるようです。

その点、親しい間柄の人であれば、無理することもありません。

自分のことを理解してくれている人ですから、言葉が少なくても、ちゃんと受け止めてくれるでしょう。

一緒にいて楽な存在だからこそ、長く付き合いを続けられるのですね。

そのように親しい仲であれば、どんなことでも話せるし、また、分かってほしいものだと思うのですが、親しい人にも知られたくないことなんてあるのでしょうか。

仏教に説かれる人間の姿

仏教では、私たちの姿を「煩悩具足の凡夫」と説かれています。

「具足」とは「それでできている」ということで、「凡夫」とは「人間」のことですから、煩悩でできているのが人間だ、ということです。

では、「煩悩」とは何でしょうか。

文字通り、私たちを煩わせ、悩ませるものが煩悩です

全部で108つあり、中でも特に恐ろしいと言われるのが、欲、怒り、ねたみ・そねみの3つの心です。

は5つのものに分けられます。

食べたい飲みたい、という食欲、1円でも多く儲けたいという財欲、異性を求める色欲、ほめられたい、好かれたいという名誉欲、眠たい、楽がしたい、という睡眠欲です。

私たちは日々これらの心に動かされ、満たすことを喜びとしています。

その欲が妨げられると出てくるのが、怒りの心です。

怒りはよく炎にたとえられますが、導火線に一度火が付いたら止めることはできません。

怒りを全面に表して後悔した経験のある人は、星の数ほどいるでしょう。

そして、怒ってみてもどうしようもない相手には、ねたみやそねみの嫌な心が出てくるのです。

人の幸せが喜べない、人の不幸が喜びのタネ。

良くないこととは思いつつも、心で思うことだけはどうしようもありません。

ありのままには見せられないこと

これらの心は、すべての人にあると言われています。

人を押しのけてでも、自分の欲を満たそうとしたり。
自分の怒りがおさまるまで、人を攻撃してしまったり。
嬉しそうな顔がおもしろくないからと、人を不幸に追い込もうとしたり。

決して人には見せることのできない、恐ろしい心を抱えているのが「煩悩具足の凡夫」なのです。

お釈迦さまは、「心口各異 言念無実(しんくかくい ごんねんむじつ)」と説かれています。

これらの心を抱えている限り、私たちはありのままをさらけ出すことはできません。

だからこそ、心のままを口に出すことのないよう、自分を抑えて演じているのです。

次のような話を聞いたことがあります。

好きなものや趣味が合い、とても話しやすくて意気投合した子。

親友として、ずっと仲良くしてきたけれど、一緒にいてどうしても気になるところがある。

ある時、我慢できなくなって、ついついそれを口に出すと、相手はショックを受け、一気に関係も崩れ、元には戻れなかった…。

仲がいいからこそ、自分の思いを分かってほしい。隠し事はしたくない。

けれども、ありのままを告げてしまったら、きっと自分から離れて行ってしまう。

親しい人であればあるほど、失えば痛みが大きくなるものです。

失いたくないと思えば、言えないこともたくさん出てくるのではないでしょうか

大事にしたいからこそ、知っておきたいこと

どんなに親しい人にも知られたくないことがあるのは、なぜだろう?

自分の心を深く掘り下げていくと、決して表に出せないことがたくさんあるのに気づきます。

それは、見たくないこと、知りたくないことばかりかもしれません。

しかし、そういう心があると自覚するところから、親しい人への配慮も生まれてくるのだと思います

人間の姿をよく知ると、親しいからこそ、言わない方が良いこともあると分かります。

お釈迦さまを偉大な心理学者だと表現した人もありますが、人間の心をより詳細に説かれている仏教を聞くと、自分の心と向き合うよい機会になるかもしれません。

それでは、また(^^)/

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