感謝の言葉はどこから出てくる? 『この世界の片隅に』が描く「恩」の精神
2020/01/16
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
チューリップ企画スタッフのわかです。
第40回日本アカデミー賞を受賞して
先日発表された第40回日本アカデミー賞で、『この世界の片隅に』が最優秀アニメーション作品賞を受賞しました。また、第90回キネマ旬報ベスト・テンでは、本作が日本映画ベスト・テンの第1位に選出されました。
アニメーション映画が第1位に選出されるのは『となりのトトロ』以来28年ぶり2度目だといいます。
ミニシアター系の映画ということで、封切り時は全国で63館しか上映していなかったそうですが、今では300館もの上映館があるとのこと。異例の大ヒットを記録しています。
監督・脚本を手がけた片渕須直さんは、アカデミー賞の受賞時に以下のようなコメントをされていました。
「6年以上、諦めなくて良かったです。
諦めなくて済んだのは、プロデューサーの丸山正雄さんが『もうちょっと続けようよ』と言い続けてくれたから。
もし途中で『もう、いっか』と思っていたら、皆さんの心のなかにすずさんという、小さな、かわいらしい主婦の姿が宿ることはなかった。
そう思うと、こういう風に立てているのが、色んな人の支えのおかげなんだなと思っています」
幸せな結果を受けたのはなぜ?
『この世界の片隅に』という映画が封切られるまでには、大変な紆余曲折があったそうです。それだけに、ここまでの大ヒットを記録し、アカデミー賞という栄誉ある賞を受け取られたときには感慨もひとしおだったのではないかと思います。
片渕監督は、「ここに立てていることは、色んな人の支えのおかげ」だと言われました。
改めてトロフィーを手にしてみて、今までのことが思い出されてきたのかもしれません。
「おかげ」とは、「他から受けた恩恵」のこと。
「恩」というのは仏教の言葉ですが、私たちもよく使います。
この字には、「因」の下に「心」がついて、「原因を知る心」という意味があるのだそうです。
自分が今、幸せな結果を受けている。その原因を考えたとき、決して自分一人の力ではなしえなかったことに気づきます。
そこに気づいたとき、初めて「おかげさまで」という感謝の気持ちが出てくるのです。
日常を描くからこそ伝わること
『この世界の片隅に』という作品を通して監督が伝えたかったことの一つに、戦時中と今は「地続き」なのだということがあるそうです。戦時中という特殊な時代にありながら、世界の片隅に生きる主婦の、世界の片隅の日常を描くことで、私たちとなんら変わりのない普通の人が存在していたことが分かります。
質素でも、美味しいものを食べられる幸せ。
大切な人と一緒に笑いあえる幸せ。
自分の居場所があるという幸せ。
普段当たり前だと思っていること、ともすれば不満に思ってしまいがちなことが、実は有難く、幸せなことなのだと気づく人も多かったようです。
自分の生活を客観的に見ることができたからかもしれませんね。
日常の幸せを見つめてみよう
物語の終盤、主人公すずが夫の周作にこんなことを言う場面があります。「ありがとう。この世界の片隅に、うちを見つけてくれて」
家族や友人など、関係の近い人であればあるほど、なかなか感謝を伝えることができないものです。
照れくさいのもあります。
けれど、それ以前に、家族や友人から何かをしてもらえることは「当たり前」だと感じていて、感謝をするということに思い当たらないのではないかなと思います。
「親しき仲にも礼儀あり」と言います。
日常の中にある恩こそ、気に留めていかなければ、埋もれてしまうものばかり。
改めて考えてみると、毎日恩を受けていることばかりなのだなあと感じます。
普段の何気ない幸せに目を向けてみると、素敵な発見があるかもしれません。
見えないところに隠れている、そんな日常の中の様々な「恩」に気づき、感謝の言葉を忘れないようにしたいですね。
それでは、また(^^)/
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この記事を書いたスタッフ
チューリップ企画コールセンターのわかと申します。
静岡の温暖な気候の中で育ったせいか、のんびりと構えていることが多く、周囲からはよく「いつも安定しているね」と言われます。
日常の様々な出来事を物語化することが好きです。
学生時代、家ではほとんどの時間を机の前で過ごし、ノートに散文を書きためる日々を過ごしていました。
そんな小さい頃からの癖で、日常の出来事を無意識に観察していることがあり、見ているうちに周囲の人間関係も客観的に把握することができるようになりました。
今まで見てきた人間関係、自分自身の悩んだ経験や、日々の電話応対の中でのお客様の声などを通して、皆様の悩みに寄り添える記事を書いていきたいと思います!