“一人の名誉”と“多くの人の命”はどちらが重い? 理想と現実で揺れ動く心
2020/01/16
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
チューリップ企画スタッフのわかです。
死因を究明してたどり着いた事実
先日から「アンナチュラル」という法医学を題材にしたドラマが放送されています。法医学者である主人公が所属する組織では、不自然な死を遂げた人の死因を、依頼を受けて究明しています。
今回の話では、30代で突然死してしまった息子の本当の死因を調べてほしいと、ある夫婦がやってきました。
死因を追求していくうちにたどり着いたのは、その男性が、中東で何百人という死者を出した感染症によって亡くなったという事実でした。
男性は中東へ出張に行き、ウイルスを持ち帰ったのではないかと思われ、その状態で多くの人に接触していたのです。
それによって仕事仲間の女性が亡くなっていたことが分かり、男性の職場では大規模な調査が行われることとなりました。
その様子はニュースでも大きく取り上げられ、「感染の自覚症状が出ていたはずなのに、なぜ空港で申し出なかったのか」と世間から大きく非難されることになってしまいます。
悲しみに暮れた心で思うこと
男性には婚約者がいましたが、彼女にとっては大変悲しみの大きい出来事でした。婚約者を失っただけでも悲しいのに、亡くなった婚約者には、心ない非難まで浴びせられることになったからです。
婚約者の無実を信じ、「彼は真面目な人だから、自覚症状が出ていたのなら必ず申し出ていたはず」と、帰国後すぐに健康診断も受けていたことを主人公に打ち明けます。
しかし、それは、彼がウイルスを病院に持ち込んだ可能性があることを示していました。
病院には抵抗力の落ちた患者がたくさん入院しています。
そこにウイルスが紛れ込んだら、多くの被害を出すことになるでしょう。
主人公は、一刻も早く伝えるべきだと婚約者を説得しますが、この事実が明るみに出れば、彼への更なる非難は免れません。
悲しみに暮れた様子の彼女は、今にも泣きだしそうな顔でぽつりと呟きます。
「誰が亡くなろうが、どうでもいい」
簡単には割り切れないこと
たくさんの人の命が危険にさらされている場面で、この言葉は不謹慎だと言われるのかもしれません。一人の名誉と、多くの人の命。
どちらが大事かと聞かれたとき、多くの人が比べるまでもなく、「命の方が大事だ」と答えるのではないでしょうか。それが一般的な常識で、当たり前だからです。
もし、自分とまったく関係のないところの話であれば、理性を働かせてこのように答えることができるでしょう。
しかし、天秤にかかっているのが、「名前も知らない誰か」ではなく、「自分の大切な人」の名誉だったらどうでしょうか。
命の方が大切だからと簡単に割り切れることではないなあと思います。
私たちには、生きていく上で、様々な選択を迫られることがあります。
それらは、簡単に答えられるものばかりではありません。
選択に悩むことも少なくないのではないでしょうか。
頭では分かっていても…
学生時代、部活の遠征で電車を乗り継ぎ、東京に行ったことがありました。大会が終わり、疲れ切った体で駅までの道を歩き、電車に乗ったところ、ちょうど席が空いていました。
ところが、ちょうど帰宅ラッシュの時間で、駅に停まるたびにたくさんの人が乗ってきます。ご年配の方も乗ってきていました。
こんな時、学生である私は当然席を譲るべきと誰もが言うでしょう。
しかし、くたくたになっていた私にはその判断ができませんでした。
悩みに悩んだ挙句、結局席を譲ることのないまま、最寄駅までの時間を過ごしました。
「理想はこのようにすべき」と頭では分かっていて、それを他人には諭していても、実際自分のこととなると理想通りに動けないものなんですね。
仏教で教えられる心の姿
仏教では、私たちの心の姿を「我利我利(がりがり)」と教えられています。これは、「自分さえよければいい。他人はどうなってもいい」という自己中心的な心です。
自分のことしか考えていないような人は嫌われますから、私たちは普段、この心を押し隠して生活しています。
だから余裕があれば、他人に親切にできるし、気遣うことだってできます。
しかし、余裕がなくなると、途端に顔を出すのが我利我利の心なのです。
たとえ多くの人の命が失われることになっても、自分や、自分に近い人が幸せならそれでいい。
根底には、このような心が常にあるのではないでしょうか。
こんな自己中心的な心を持つ私だからこそ、善いことをする努力をしていかなければいけないと教えられたのがお釈迦さまです。
我利我利の心のままに振る舞っていては、他人を傷つけ、自らも不幸にしてしまうからです。
疲れている時こそ、さっと席を譲れる。
悲しい時こそ、他人を気遣える。
辛い時こそ、笑顔を絶やさない。
とても難しいことですが、そういうことができる人は幸せになれる人なのでしょう。
自分自身の心を見つめて、善い行いに心がけていきたいと思います。
それでは、また(^^)
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この記事を書いたスタッフ
チューリップ企画コールセンターのわかと申します。
静岡の温暖な気候の中で育ったせいか、のんびりと構えていることが多く、周囲からはよく「いつも安定しているね」と言われます。
日常の様々な出来事を物語化することが好きです。
学生時代、家ではほとんどの時間を机の前で過ごし、ノートに散文を書きためる日々を過ごしていました。
そんな小さい頃からの癖で、日常の出来事を無意識に観察していることがあり、見ているうちに周囲の人間関係も客観的に把握することができるようになりました。
今まで見てきた人間関係、自分自身の悩んだ経験や、日々の電話応対の中でのお客様の声などを通して、皆様の悩みに寄り添える記事を書いていきたいと思います!