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気づかぬうちに連鎖にはまっていませんか? 本当は恐ろしい欲の心

 

2020/01/16

いつもお読みいただき、ありがとうございます。
チューリップ企画スタッフのわかです。

「扇風機おばさん」こと、ハン・ヘギョンさんという韓国の57歳の女性の訃報が報じられていました。
整形依存から顔が膨れ上がり、まるで扇風機のような姿になってしまったことからこのような呼ばれ方をしていたそうです。

ニュースで整形前のヘギョンさんの写真が紹介されていましたが、とても美しい人だったことが分かりました。
若いころの夢は、美しくて愛される歌手になること。
ヘギョンさんは夢を叶えたいという強い思いから一度の整形では満足できず、もっともっとという強迫観念にとらわれていたのだといいます。
そのうち顔が膨れ上がってしまい、命の危険にさらされるほど危険な状態になってしまいました。

見ているこちらからすれば整形は必要ないほどの容姿であったのに、なぜ依存するほどまで整形に手を出してしまったのでしょうか。

どこまでも深い欲の心

「美しくなりたい」という思いはヘギョンさんだけでなく、多くの女性が持っている願いでしょう。
この思いを仏教では名誉欲(めいよよく)と言われます。
女性ならば美しくなりたいという思いとして表れていますが、男性ならば、かっこいいと思われたい、仕事ができると評価されたいという思いを持っているかもしれません。
名誉欲とは、そのように人からよく見られたい、悪く思われたくないという心のことを言われるのです。

名誉欲は、欲の中の1つです。
欲は108ある煩悩の中でも代表的なものとして挙げられます。
欲しい欲しいと際限なく求める心のことですから、欲は青色で表現されます。
深くなればなるほど青さが濃くなる海のように、底のない深さを表されているのです。

欲には「これで満足」ということがありません。
渇愛の法則と言われますが、満たせば満たすだけ渇き、もっともっとと求めずにいられないのが欲望です。

欲で苦しんでいませんか?

欲は5つに分けられ、それぞれ食欲、財欲、色欲、名誉欲、睡眠欲と言われています。
これらを満たすことで幸せを感じているのが私たちですが、上記のように、欲には限りがありません。
幸せになりたくて少しでも多く欲を満たそうともがいても、心はまた渇き、満たせないことに苦しむのです。

ヘギョンさんは、どこまでいっても「美しくなりたい」という名誉欲を満たすことができなくて苦しんでいたのだと思います。
人それぞれ、どの欲が強いかは異なっても、欲を満たせなくて苦しんでいることに変わりないのではないでしょうか。
それこそ、「煩悩」の文字の通り、欲に煩わされ悩まされている私たちの姿なのです。

私たちの苦しみが深まっていく過程

仏教では、私たちの苦しみが深まっていく過程を惑業苦(わくごうく)で教えられています。

惑とは煩悩、たとえば欲の心のことです。
欲の心を起こすと、私たちは行動を起こします。これを業と言われます。
そしてその結果苦しむ。
ところが、苦しんで終わりではなく、その苦しみから更に煩悩で惑い、行動を起こし苦しむ…と延々と負の連鎖が続いていくのです。

ヘギョンさんは最初「美しくなりたい」という欲の心を起こしました。
その結果整形という方法を選んだのです。
しかし、それでも欲を満たすことはできずに苦しみ、もっと美しくなりたいと欲の心は大きくなりました。
この連鎖に陥ってしまったことで、ヘギョンさんは大変な苦しみを受けられたことと思います。

このままではいけないとわかっていても、もうやめられない。離れられない。
一度連鎖にはまってしまったら、簡単には抜け出すことができないでしょう。
ニュースを見ていると、世の中、欲で身を滅ぼしていく人が後を絶ちません。
そしてそれはまた、私たち自身の姿でもあるのです。

煩悩あるがままで幸せになれる世界

親鸞聖人は、私たちは「煩悩具足の凡夫(ぼんのうぐそくのぼんぶ)」であると教えられています。
具足とはそれでできているということ、凡夫とは人間ということですから、煩悩でできているのが人間だということです。
雪だるまから雪をとったら何も残らないように、人間から煩悩をとったら何も残りません。
そんな私たちが欲をなくすことはできないでしょう。

満たせない欲の心がある限り、私たちは苦しみ続けなければなりませんが、かといって欲の心をなくすこともできません。
そんな私たちが煩悩あるままで幸せになれることを教えられたのが仏教です。
その世界を「煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)」と言われます。
(詳しくは「煩悩に振り回されていませんか?|「煩悩即菩提」から知る煩悩と幸せの関係」の記事をごらんください)

欲で自分の身を滅ぼすことのないように、自分の心の姿をよくよく知っておくことが大切ですね。
そして、本当の幸せになれる世界を知って、そこに向かって進んだなら、より良い人生を生きることができるのではないでしょうか。
それでは、また(^^)

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